2017-11-11トークシリーズ Vol.4 移住と文化プログラム「大山町の楽しげに暮らす人々に学ぶ移住者の生活」

「巻き込むためにも、純粋に楽しむ」
移住者を惹きつける多彩な文化活動

文化プログラムトークシリーズ Vol.4 移住と文化プログラム「大山町の楽しげに暮らす人々に学ぶ移住者の生活」

 日本百名山にも選ばれている大山(標高1729メートル)を南に擁する鳥取県大山町。同町の移住者数は、町民主導でまちづくりや文化活動を展開するようになった2012年以降急増し、それまでの年間1、2世帯から10世帯前後まで増加した。しかも定住率は88%という高さを誇る。

 今回登壇した大下志穂さん、中村隆行さん、薮田佳奈さんは、一連のまちづくり・アートプロジェクトの中心メンバーだ。大下さんは同町西隣の米子市出身で、2009年にカナダ・バンクーバーからUターン。多岐にわたるプロジェクトの発案者・ディレクターとして八面六臂の活躍を続ける。埼玉県出身の中村さんは17年前の01年、ジャック・マイヨールに憧れて素潜り漁師になろうと、着の身着のまま町に移住。同町に「根を生やし」(ご本人談)、各種文化活動の土台となっているUIJターンした若手起業家を中心につくる「築き会」副代表も務める。いまやそのキャラクターもあいまって、地元では知らない人はいないほどの有名人だ。薮田さんは兵庫県の淡路島出身。親友に誘われて14年に初めて同町を訪れ、笑顔で夢を語る中村さんらの姿に感動し、移住を即断即決。あっという間に町に溶け込み、現在はお城付きシェアハウス「のまど間」、”泊まれる居酒屋”「てまひま」の運営などを手がけている。

 トークイベントでは主に大下さんが、移住相談窓口も併設している交流施設「まぶや」の開設意図や「大山アニメーションプロジェクト」の成果について解説した。とりわけ興味深かったのは「そもそも最初から全体計画を立てていたわけではない」という点。大下さんは「大事なのは、凝り固まったプランより、人と人との出会いとタイミング。有名アーティストをよそから単に呼ぶだけじゃなく、影響を受けて町民の誰かが本気で何かを表現するようになったり、アーティスト自身が殻を破って新しいことに挑戦したり、という変化を目撃したほうが楽くないですか」と参加者に問いかけた。

 その代表例が、毎年同町で制作活動を継続している切り絵作家・音頭歌手のチャンキー松本さんと中村さんとのコラボレーションだ。2015年に制作された短編アニメ「ボロ」は中村さんの半生を松本さんが象徴的に描いている。「小さく泣いて大きく笑う」というフレーズが印象的な主題歌は、中村さんの鼻歌から生まれた。薮田さんは、松本さんらが15年に創作した「大山ワワワ音頭」の普及に取り組み、10年前に旧3町が合併した同町の交流促進に活用している。

 大下さんたちはトークイベント直前の11月3〜5日に、これまでの活動を集約・発展させた「イトナミダイセン藝術際2017」を開いた。アーティストインレジデンスも、シェアハウスもアニメーション制作も踊りも地元に伝わる民藝も、広義の「いとなみ」に収斂するという思いをタイトルとコンセプトに込めたそうだ。変わることを「楽しみ」、場づくりを「続ける」という地元有志の基本理念が、間違いなく大山町の暮らしに移住者が魅力を感じる一因となっている。

トークシリーズ:これからのスケジュール

小林 稔和DARA DA MONDE